come alive〜既婚Gの雑記帳〜

横浜在住40代既婚ゲイのひとりごとです。

あれから。

「ため息をつかせる存在」には、

2つの種類があると思います。

 

ひとつは、

「自分だってこれ位のこと出来る」とか、

「自分だったらもっと上手く出来る」、

「この人ばかりいい思いをして」と

「ヤキモチ」混じりのため息をつかせる存在。

 

もうひとつは、

「どうしたらこの人の様になれるだろう」、

「いや、自分は絶対に、こうはなれない」と

ただ、ただ、尊敬のため息をつかせる存在。

 

RALPH、という

音楽で繋がった

かけがえのないゲイの友人が居ます。

 

彼は明らかに、後者の

「ため息をつかせる存在」です。

 

演奏技術が高く、

コンサートマスターもこなす実力がありながら、

それを鼻高々に掲げる事もなく、

「自分は演奏者だから」と

演奏以外の裏方の仕事を誰かに投げる事もない、

何事にも一生懸命で、とことん元気な方です。

 

だから彼の周りには、

自然と人が集まって来ます。

 

そして彼も、

誰かからの声掛けを待つだけでなく

「一緒に演奏しよ!」と

多くの仲間を作るために動く人です。

 

演奏会の打ち上げや、

大人数が集まるお酒の席では

必ず「馴染めなく」て

ひとり、浮いてしまう人が出てきます。

 

RALPHはそんな人を放置したり、

ひとり先に帰らせてしまったりせずに、

必ず声を掛けます。

 

その席に60人以上の人が居ても、

必ずそれに気付き、声を掛ける人です。

 

お酒が入って

音楽性の事で口論となった人たちを

全力で止めていたこともありました。

 

彼の必死な姿を見て、

当事者ふたりは自然と落ち着き、

その後も同じ舞台で演奏をつづけています。

 

喧嘩がおさまったときに見せたRALPHの笑顔、

正に後者の「ため息」、でした。

 

彼は「誰か困っている人は居ないかな」、

「自分にできることはないかな」、

そうやって周りを気にかける事を

当たり前のようにする人です。

 

だから誰からも、愛されています。

 

梅雨明け間近の7月、

彼が所属する団体の定期演奏会がありました。

 

日中は土砂降りだった雨が

終演後の夕方にはすっかり止んでいました。

 

彼は終演直後で大忙しだったにも関わらず、

来場したであろう方々へ

mixiにお礼の投稿を掲載しました。

 

会場のホールから中野駅に向かう途中、

雨上がりの夕焼けに混じって虹が見えていました。

彼もそのことを投稿の最後に書き留めていました。

 

「あ、虹が出てる♪」

 

この言葉を最後に、

彼はその数日後、旅立ちました。

 

享年34歳。

 

彼はオフィスでひとり、残業をしているときに

心筋梗塞の発作を起こして、倒れました。

 

警備員に発見されたのが22時30分。

いつからそこに倒れていたのか、

誰も知りません。

 

知らせを聞いた日の夜、

僕は居ても立ってもいられず

彼が行きつけだったゲイバーへ向かいました。

 

小さなビルの2階にあるそのお店。

僕が到着したときには1階の外にまで、

知らせを聞いた彼の仲間が集まっていました。

 

誰もが黙って、手を重ね合いました。

色んなことがいっぺんに起きた気がして、

みんな涙も出なかった。

 

どうしてRALPHなの?

 

「消えてしまえ!」と思わせるような輩が

のうのうとしているのに、

何でRALPHなの?

 

こんなにたくさんの人に愛されているのに、

何故、最後はひとりで倒れてしまうの?

 

怒りや苛立ちが治まった途端、

とんでもない悲しみに襲われました。

 

誰もが皆、そうでした。

 

誰もが「次の演奏会で会ったときに」、とか

「次の飲み会のときに」、とか

当たり前のように「次」がある、と思っていたのを

こんなに悔やんだことはありませんでした。

 

そんな中、こう言った人がいました。

 

「いずれまた、絶対に逢えるよね」

 

そう。

彼は「逝ってしまった」のではない、

今は「逝った状態にある」だけなのだ、と。

 

「あのブス、34のまま歳、とらないかと思うと

   益々不愉快だわ〜」

 

誰かがそう言ったとき、

いつもの音楽仲間の明るさが戻りました。

 

それを聞いて彼もきっと、

何処にいてもRALPHと解る大声で笑っている。

 

今でも僕は

演奏会の舞台に立つと、RALPHのことを想います。

 

13年経った今でも、想います。 

 

僕も今では結婚して子供がいる、なんて知ったら

爆笑されるのかな。

 

今ではiPhoneとかTwitterとか9monとか、

あなたがいたら

絶対面白がって遊んだであろう端末やツールが

たくさん、あります。

どんな風に駆使するのかな。

 

泥酔してみんなで店の外で記憶を失う

『スナック路上』、

今でも思い出すと笑ってしまうよ。

 

それと、いずれ彼に逢ったら、

年下の僕を何故「姐さま♡」と呼んだのか、

問い詰めようと思います。(笑)

 

『生きるというのは 別れを知ること

愛しい人よ

 

あれから どうしていましたか?

私も 歳をとりました

 

あれから 元気でいましたか?

随分 月日がたちました

 

あなたの事を ずっと 見ていましたよ

頑張りましたね

さあ 私の分まで まだまだ 頑張って』

 

彼を超える人は、二度と現れないと思います。

 

限られた人生、

尊敬の「ため息」をつくだけでなく、

自分自身が「ため息をつかせる存在」に

少しでも近づきたい。

 

そう思いながら僕もまだまだ、頑張ります。

そんな事をふと感じた、深夜です。

 

引用:『あれから』

          秋元康(作詞)
          佐藤嘉風(作曲)

          AIひばり(歌唱)

 

tak.

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