ゲイ歴20年。
「結構、こちらの世界に慣れてんだね」
実際にお会いした既婚ゲイの方から
よく言われる言葉です。
ヒャダ失礼ね
あたしの何処がおネエなのよ
あたしはノンケよ!
こんな言い回しを聞いただけで
うんざりする方が殆ど、だとは思いますが
僕はこの類の「洗礼」を受けた世代です。
大学2年の時、
僕は所謂「ゲイバーデビュー」をしました。
(所謂、と言うのか?)
そのゲイバーは
8人も座ると満卓になる小さなお店。
僕と、僕を誘ってくださった方がお邪魔した時には
すでに5人のお客さんが居ました。
スーツをビシッときめた30代から40代のお客さん達。
どこから見ても「大人のイイ男」、
女性からもモテて当たり前の雰囲気。
僕、呆然でした。
自分もこうなりたい、と思う「紳士」ばかり。
勃◯どころか緊張しっ放しでした。
ひとりのお客さんが
「今日、初めて来たの?」と
声を掛けてくださいました。
すると、その方の隣に座っていた方が一言
「あんた何で突然声低くなってんのよ」
僕に声掛けくださった方がそれに対して一言
「うるさいわね、あんたこそ座り方変わったわよ」
スーツ、短髪、イケメン…
それなのに!なのに!
なのにだのに!
惚れ惚れした矢先に!
矢先に矢先に!
別に何もないけど!
…すみません、取り乱しました。
この頃は自分のお金と時間を使って、
実際に「行動=出掛ける」をしなければ
誰とも接点を見出せない時代でした。
今の様にSNSやアプリが無かった時代、
行動を起こす「きっかけ」を見つける段階でさえ、
実際に自分の身を動かさなければならない、
そんな時代でした。
今思うと、言い方は悪いですが
面倒な時代だった、とも言えるかも知れません。
いや抑、人付き合いとは面倒なもの、です。
今はネットの普及と共に
「横着」な人付き合いをしている人が
増えてきている様に感じます。
SNS等で山ほどの繋がりを得たり、
通りすがりの「いいね」=「どうでもいいね」
を乱射し合ったり。
本当はそうではない、のかも知れませんが
そんな空々しい2次元界を見ていると
僕は少し、引いてしまう時があります。
え?そういう僕は2次元界ではどうなのか?
と申しますと…
見て!もっとあたしを見て!
いいねいいね構って構って
褒めて褒めて褒めちぎって!
…さて、
29歳で結婚するまでの間、
それはそれは「濃い」ゲイライフを
僕は過ごしてきました。
「店子(=ミセコ=ゲイバーでバイト)」
の経験も、あります。
そんな僕が今では2児の父。
人生って、不思議なものですね。←他人事
僕がゲイバーデビューを果たしたお店のマスター、
オーダーした途端に忘れるし、
お客さんを呼ぶ時は「ねぇ、ブス!」だし、
(ランクアップすると「ねぇ、奥様!」)
お店出入口の急階段を「怖い」と言うと
「ゆっくり落ちなさい」と言うし、
そして僕が落ち込んでいたときは
「お前なんかね、
ペシャンコになれば良いんだわ!」と、
たったその一言で救ってくださったり…
そのお店も、もう40周年になるそう。
23時を過ぎると「さ、みんなもう帰って!」と
満卓でも閉めちゃうマスター。
今度も早めにお邪魔しよう。
人間味があって、雑味があって、
そんな「血の通った人同士の繋がり」の
素晴らしさや大切さを
これからの20年も、
更にその先があるのならその先も、
ずっと感じて行きたいと思っています。
tak.